仮面ライダーGENESIS 【嵐田雷蔵氏】



プロジェクトRIDER  


Raise. Imprve. Draft.Evolution. Ranger.

『強化改造進化特務要員』R.I.D.E.R.


『Evolution. Ranger.』進化特務要員の1タイプの呼称であり、

「ER」シリーズにはこのほか用途別、生産工程別の多種改造人間が存在する。

ある産官学複合研究団体による、次世代環境適応型生命維持システムの開発提言であり、

この時代、地球人口の爆発的増加と環境汚染の進行予測に伴い、

こうした人体改造適応技術の倫理観には厳しい非難がついて回るものの、

その臨床実験施行については国家単位のプロジェクト「GENETECH」が承認されている。



Magna.Advanced.Saviour.Theo.Exalted.Race. マスター

Strategical.Tsak.Raise.Imprve.Knight.E.R. ストライカー

Draft.Imprve.Vanguad.E.R. ダイバー

Imprve.Neo.Vanguad.Assault.Draft.E.R. インベーダー

Measured.Organic.Neo.Strategical.Tsak.E.R. モンスター




これらのうちS、D、Rのタイプは、

基本的には強化外骨格を装着することを前提とした特殊作業要員として開発されているが、

現時点では装着者の人体においても外骨格に対応すべく、生態組織の改造「レベル2」が必要。

これは臓器や骨格移植ではなく、生体組織そのものの強化を図る改造とされている。

強化外骨格の概念については、

まだ「特殊環境での専門作業用ハードウエア」という認識で開発が進められているが、

そのシステムについては「実際に作業服を装着する」「装着の手法に大気中元素の復元融合」など

さまざまな技術開発が行われている。

 RIDER(ライダー)は、DIVERと同クラスのレベルに属しているが、

プロトタイプのGENESISプログラムや規格外GENOCIDEプログラムのハードウェア附加により、未知数の能力を獲得する。
 
このプログラムを与えられた事で、ライダーの一人は、一人は悪の使者へと変貌する。



 GENOCIDEは、GENETECH計画を推進する産官学複合研究団体世界に所属しながら、

転覆の野望を抱く青年科学者が、プログラムを改竄した「ライダー強化システム」である。

彼自身がその臨床実験体となったGS計画の中で、GENESEEDプログラムとすり替えて改造手術に導入される。

 ライダーGENOCIDEは覚醒直後、自身が所属している末端の研究機関を乗っ取り、

本来ならば格上の幹部であるはずのSTRIKERをも凌駕する首領となる。

しかし彼にも、この複合研究団体の全容はつかめていない。

ゆえにMASTERや、別の研究部門で実践投入されているDIVERの存在は知りえない事実として物語の縦糸となる。


ライダーGENESISは、組織を脱出した青年が反抗分子にかくまわれつつ、

親友(GENOCIDEと化した科学者)を野望から解放するため、

GS1装備と呼ばれる強化外骨格装甲システムを運用して誕生する。

MONSTERはいわゆる戦闘改造生体(怪人とは限らない)であり、

INVADERがこれらモンスターを指揮する戦闘工作員にあたる。

指揮系統では更に上級のSTRIKERがあり、

まったく別の組織形態として、諜報活動専門にDIVERが登用されている。


GENESISとGENOCIDEは、

それぞれ大気中や地中、水中の元素を転換し“強化変身”を支援するシステムを示す。
 
ベースとなったGENESISの方がやや旧式化しており、スペックの上ではGENOCIDEに劣る。
 
GENESISとは、宇宙元素集積エネルギー転送統合システム
 
『Galactic.Elemental.Nest.Enagy.Sift.Integration.System』の略称である。
 
これに対するシステムGENOCIDEは、宇宙元素集積有機転換統合駆動増幅機能

『Galactic.Elemental.Nest.Organically.Convert.Integration.Drive.Expander 』を略す。
 
GENESIS(GS1)、GENOCIDE(GS2)の相違点は、

GS1がMASK起動による変身装甲エネルギー転送機能であるのに対し、GS2はその移植者そのものに変身を促す点である。
 
GS2を移植されたライダーは、体内にすべての変身機能を保有する事から、

自身の健康状態を除けばあらゆる環境において変身を可能としている。
 
一方、GS1は素体としての改造人間に対し、

ライダーの特殊能力を誘発するためのMASKを起動し、GENESISを元素転換させ、

素体に“鎧”を装着させるシステムを取る。

このため、MASKを起動できない条件下においては変身が不可能となる場合がある。


MASKとは、ライダーがGENESIS完全体になるための変身装甲装着キィだ。

『Metamorphose.Armour.Setup.Key 』を略している。

この変身システムから推測できるように、

GS1、ライダーGENESISはメカニカルER、GS2、ライダーGENOCIDEはバイオニクスERに区別できる。



 ライダーGENESISは、MASKのセットアップによって初めて変身をとげる。

これは素体の生命維持機能を優先した結果で、ER(改造人間)とはいえ、

長時間の特殊形態への変身による代謝機能への負担、強化ボディーの負荷を軽減するための措置である。

 GENESISの変身には、ライダーの機動車両である『アイオロス』とのコンビネーションが不可欠となる。

アイオロスこそがGENESISのシステム中枢として開発されたマシンで、

素体ライダーの脳波コントロールを経てMASKが起動、

素体ジェネレーター『ジェネストーム』を介してGENESISが元素転換される。

アイオロスは脳波コントロールで無人制御でき、

コンタクトが取れればその距離にかかわらずライダーを追従し、単独で走行する。

またライダーとアイオロスが同一現場に居合わせなくとも、脳波コンタクトが可能であれば、変身の妨げにはならない。
 
MASK起動前のアイオロスは、一般的なオートバイとの大差はないが、ライダーの変身と同時に特殊装甲を元素転換し、機動兵器となる。
 
ライダーGENOCIDEは、自らの意志で自由に変身がとげられる。

アイオロスのような支援システムを必要としないが、

素体の生命維持機能として変身時間の制約を受けるのが唯一の弱点である。

変身時間の限度は定まっておらず、素体の消耗やコンディションでリミッターが作動する。





あらすじ

 
木更津山中のDNALは、地方公共団体の設置した遺伝子工学の専門研究所であったが、

その施設運営は外部からの研究機関・研究チームなどを賃貸形式で受け入れることで成立していた。

三年ほど前から、国の独立行政法人が招集した産官学複合研究団体がここを借り受け、

次世代環境適応型の生体工学について、2部門の研究開発を実践していた。

GENETECH計画。それが彼らの研究事業の冠となる言葉であり、団体の名称であった。

激変していく地球環境の悪化をくい止める手だては、

例えばCO2の排出停止などであるが、それ自体を極限まで突き詰めれば、人類そのものの生存を否定することになる。
 
世界各国の首脳陣も政財界も、国際会議がうたう議定書に魅力は感じていない。

地球環境維持をアクティブな視点から捉えたインキュベーションこそ、

名実共に利益を得られる“最善の選択”というスタンスが、いつしか事務レベルで語られるようになっていた。
 
そこで、人類そのものの種としてのあり方を、環境適応型に改善していく主旨の提言がささやかれるようになり、

社会的には倫理上の批判を受けながらも、これと連携して繰り出される環境悪化のニュースもあいまって、

社会全体がなんとなく、無意識のうちに眼をそむけるような風潮が生まれていた。
 
その先鋒となったのが日本である。


長引く不況によってアジア諸国に経済中枢を奪われつつある情勢下、

政府による社会・産業構造改革という大鉈が振るわれ、1980年代以来、「世界トップクラスのテクノロジーを保有してはいるが、

成果の上がらない先端研究諸機関」に対して、異例ともいうべき複合研究課題を投げ与えた。
 
目的は従前の環境適応型生体工学だが、言葉を「深海、宇宙などのフロンティア開拓」とすり替えたことで、

世論の反発を巧みにかわした。

なにより、そこから新産業が生じ、経済活動の停滞から抜け出ることが第一なのだと、政治家はこぞって論じ、

時折生じる国民批判やメディアの追求を振り切った。

もちろん、所定の目的を容易にクリアすることは不可能であり、

バイオニクスやサイボーグ技術といった臨床実験の必要性が問題として残されたが、

提案のひとつにある強化外骨格というシステムは、その中身について語ることなく、

期待できる宣伝材料として有効活用され、予算投入も図られた。これがGENETECHの実践プランのひとつ、GS1(GENESIS)である。
 
ただ、GS1には、強化外骨格というハードウエアを開発しても、これを装備する人間側の生体機能が追随できず、

テスト段階では素体となるドナー自身の肉体をある程度組織変化させ、強化する必要があった。

その問題は、テストを重ねることで克服していくにしても、当面はテストベッドの生体改造を避けて通ることが出来ず、

もうひとつの提言であるGS2(GENESEED)が並行して採用された。
 
GS2は、GENETECHの最初のベースプランであったものだが、

人類の環境適応能力を人体改造することで目的別にタイプの異なるサイボーグを産み出すことにあった。

これは、特に宗教圏によっては冒涜行為だと嫌悪され、

あとから追加提唱されたGENESISプランに正式採用ナンバーを譲ることとなった。ゆえに、GS2に甘んじている。

GS2には厳しい管理体制が敷かれ、肉体改造といっても代謝機能の強化や身体組織の活性化といった、

GS1システムを補うために最低限必要なバイオテクノロジー運用に限定されるはずだった・・・


GS2では、臨床レベルの実験体に「ER」というコードを導入していた。

その改造レベルは三段階に分類され、公式に認可されたレベルは2までである。

レベル3は他生物の遺伝子因子との組織融合や、骨格・臓器などの人工パーツへの換装など、

人類の種を根本から変えてしまう懸念を持たれ、封印されていた。
 
自ら計画に志願し、GS2移植を受けた月村正樹は、

バイオテクノロジー分野の若き天才技術者であったが、同時に野心家でもあった。

彼はレベル3改造技術のさらなる応用を密かに研究し、GS2に見せかけたGSDタイプを改造に用いていた。
 
月村はある日、隠れて培養してきた新種のバイオウイルスをDNAL館内に散布し、

同時に自らも異形のの身体・GENOCIDEを解き放って、突如反乱を蜂起した。

ウイルス「ZMB」に伝染能力はないが、感染すると特定のワクチンを服用しなければ、72時間で発症、死亡する。
 
抗体ワクチンは、もちろん月村にしか製造できない。

彼を殺す事は研究所職員自身の死を意味するため、月村による反乱は短時間で完了してしまう。
 
だが、ワクチンがGENOCIDEの身体からしか造れないという事実があり、「ZMB」単体による反乱が不安定である事もはらんでいる。


その理由は、全人類が感染した場合、

50億規模の人口に対してGENOCIDE1体ではワクチンを賄いきれないという点が第一。

また、GENOCIDEを大量生産する事は、月村正樹本人の優位性を失う事につながるため、

ウイルスとワクチンの運用自体が限定された範囲で効果を発揮する。故に「ZMB」は伝染能力をもたないのである。

GENOCIDEこと月村正樹は、そして自分自身のERとしてのボディーが不完全であることも、最初の変身で知ることとなった。

GENOCIDEを生態的に組み込んだ彼の身体は、常人を遙かに越える体力と反射速度を備えたが、

その力を長時間使い続けると消耗も激しく、いつ活動限界が現れるか判らないという欠陥があったのだ。


しかしそれを補う術はある。

GS1チームが開発しているER専用強化外骨格。これを装備することで、自身の消耗は大幅にカバーできるはずだった。

月村は自分自身が開発した数体のモンスターを引き連れ、GS1チームが詰めている隣の研究棟を襲撃する。
 
月村の同僚であった科学者・北浦勇樹は、月村と同じくERシリーズの臨床実験として素体改造手術を受けていた一人である。

彼はGENESIS計画の提唱グループであり、人体への強化外骨格装備・リンクという研究開発を担当する傍ら、

その試作ベッドとなるハードウェアのトライアルを進めていた。

勇樹に施された素体改造はレベル2と呼ばれ、GENOCIDEのような自己変身を促す生体組織は移植されていないが、

DNAの変異を誘発させ、全身の生体組織や骨格の強化が図られている。

彼はGS1のテストトライアルERとして、

GENETECHのマテリアル開発部門から受領した素体側のジェネレーター、

ジェネストームとリンケージベルト、ジェネストームの発動を促す中枢メカニクスである特殊オートバイ・アイオロスを

スーパークリーンルームのブース内に持ち込み、起動実験に失敗していたところだった。
 
勇樹はアイオロスに組み込まれたMASKシステムにプロテクトがかけられていることを確認し、

解除コードを送ってもらうために、アイオロスのAI開発を担当した筑波のAILと連絡を取っていたが、

先方から送信されていたデータが、通信システムのダウンによって中断されてしまい、そのことをきっかけに研究所内での異変に気付いた。

勇樹のブースに、同僚の苦悶の声が内線電話を通して伝わってきた。


「どうした。何があった」


「GS2の月村主任が謀反を起こした。
所内全館にウイルスをまき散らされて、俺達はいうことを聞かなければ3日後に死ぬそうだ。
スーパークリーンルームの空調システムも時期に停止させられる。GS1を使ってお前だけでも脱出しろ」



「そんなバカな。正樹とはおとといの夜に一緒に飲んだばかりだ。あいつが何をしでかしたって!?」


「月村は俺達の目の前で変身した。研究プログラムには存在しない化け物だった。
やつはGS1をよこせと言ってきているが、あのシステムを渡してはならん。やつを止めるために、お前があれを使うんだ」



「しかしアイオロスのMASKシステムにはプロテクトがかけられていて、システムが起動できない」


「ジェネストームの非常用コンデンサに、一回分だけの元素転換エネルギーが蓄積されているはずだ。
アイオロスはイグニッション出来ているのか?」


「アイドリング状態にはなっている」



「それなら逃げられる。GS1を装備して、筑波のAILへ行くんだ」


そこまでで対話も途切れた。同僚は昆虫か何かのモンスターに背後から襲われたらしい。

スーパークリーンルームの清浄度を維持する空調システムも停止してしまった。


「月村っ、月村なのか!?」


勇樹は周囲の壁に向かって叫ぶが、

ドアを外側から蹴り破って突入してきたのは、GS2チームが臨床に使っていたオランウータンだった。

しかし凶暴化したオランウータンは、月村の手によって下級ERのモンスターにされていた。

完全防護のクリーンスーツを着ている勇樹は、そのスーツのせいで動きが鈍い。

しかしこれを脱いでしまうと、同僚の言っていたウイルスが存在した場合、彼も感染してしまうのだ。

勇樹は実験ブースの架台に載せられたアイオロスを挟んで、テーブルの上に置かれたジェネストームににじり寄る。

オランウータンはそのテーブルの端を掴むと、テーブルを持ち上げ、それを勇樹に向かって投げつけてきた。

床に散らばるジェネストーム。それは腰部に装備するメインユニットのベルトで、

実際にはサブユニットを組み込んだ特殊素材のリストバンドと、アンクレットリングを両手足首に装備することになっている。
 
幸い、サブユニットは実験のために身につけていたが、

システムが起動しなかったために、メインユニットは一度外して点検をしていたところだった。

オランウータンは口から泡を飛ばしながら勇樹を威嚇する。

勇樹はとっさにアイオロスに被せてあった防塵シートを拾って、オランウータンの頭からこれを覆い被せた。

同時にものすごい衝撃を受けて壁際にはじき飛ばされるが、ちょうどその床にメインユニットが転がっている。


「いけるかっ」


ベルトのサイドパネルにある非常用コンデンサの開放スイッチをひねり、勇樹はジェネストームを腰に装備した。

彼の音声パターンは既にユニットに登録してあり、音声によってシステムを起動させることが出来るはずだった。


「起動っ、変身っ」


アイオロスには何の変化もなかったが、今度はジェネストームが反応し、各部装甲の形状記憶復元を開始した。

それでも非常用エネルギーでの変身は、首から上、両腕、両膝下の変身装甲を起動しなかった。

アイオロスはオートバイとしての機能は凍結されていない。勇樹はアイオロスにまたがり、オランウータンをはねとばして走り出す。


「すまない、みんなっ」


行く先は筑波山麓、そこにアイオロスのAI開発スタッフがいる。


木更津山中の研究所DNALが連絡不能になったことを、筑波の研究機関AILでは単なる回線トラブルだと思っていた。

しかしAILの三枝涼子のもとには同夜、政府の内閣情報調査官、八島正彦と名乗る男が訪れ、

DNALからアイオロスが盗み出されたことを告げた。八島もDNALで起きた事件の詳細をつかみかねている。

涼子は、なぜ内閣のスタッフが単なる実験車両に関心を抱くのか不審に思った。

アイオロス自体は実験車両といってもただのオートバイではない。

自律航法をソフトに組み込み、ハード面ではイオノクラフトによる自立制御を可能とした画期的なマシンである。
 
もっとも涼子はアイオロスのAI開発に携わってはいたが、

北浦勇樹からの昼間の電話で初めて、アイオロスがDNALに搬入されていたことを知ったのである。

そして彼女は、MASKシステムというプログラムについては、

それが大半を不可視読性ファイルの構成で、中身の実態を知らなかった。

勇樹からの連絡でもそのことを説明したが、

それらのファイルを梱包したプロテクトコードならば解除信号を送れると、作業を手伝っていただけなのである。

八島は、AILではDNAL自体にそれほど関心を持っていないことを感じ取るが、

アイオロスが盗まれた、という事件に関しては、涼子の反応は充分なものだと分析する。

涼子は、DNALにおいてアイオロスがどのような使われ方をしていたか分からないが、

ロックされたままの汎用AIを覚醒させようとするならば、アイオロスを盗んだ犯人は、自分に接触してこなければ、

目的を果たすことはできないと説明する。

涼子はさらに、なぜアイオロスがDNALで必要とされたのか、

そして関係省庁の人間でなく、内閣の人間がそれを伝えに来たのはなぜかを八島に問いただす。

八島は、アイオロスにかかわるプロジェクトは、省庁の壁を取り払った国家的な事業への布石だと説明するが、

そのプロジェクトの詳細については答えられないと告げた。



そこへ電話が入った。北浦勇樹からであった。

北浦勇樹は、DNALからアイオロスを盗み出した重要参考人として、緊急手配の身となっていた。

しかし、不完全とはいえライダーの能力を身につけた勇樹が駆るアイオロスは、緊急配備された非常線を巧みにかいくぐり、

すでに筑波まで逃走していたのである。愕然とする涼子だったが、八島は勇樹を保護することを約束した。

勇樹は夜陰にまぎれてAILの門をくぐり、変身を解く。

彼は建物から出てきた涼子を目の前にして緊張の限界を招き、気を失った。これを追跡してきた影がAILの敷地内に潜入する。

しかしこのとき夜が明け、影は物陰に潜んで活動休止してしまい、勇樹は影の存在には気がつかぬまま所内に運びこまれる。


再び目覚めた北浦勇樹は、涼子の研究室で手当てを受け、そこに持ち込まれた簡易ベッドに寝かされていることに気がついた。

涼子と八島が応接セットで勇樹が意識を回復するのを待ち受けていた。勇樹が気を失っていた時間は10時間程度であった。

八島は自分の身分を明かし、公安筋の情報傍受でDNALに何かが起きたことを知り、

少ない情報の中からアイオロス盗難という事件を掴んでAILに先回りしたのだと話す。

勇樹は、研究していたERシリーズとG計画がクーデターによって奪い取られ、DNALそのものが危険な状態にあることを説明した。

彼はアイオロスを盗み出した容疑者として扱われているが、なぜ警察筋は事実を知らないのかと詰問する。

ERシリーズやG計画で開発されたシステムは、来たるべき宇宙開拓時代に向け、

あらゆる環境と自然条件下においても活動可能な強化服と、特殊環境を克服できる人体の代謝機能改善が目的とされた研究であった。

さらに絶望的な環境汚染への対応と、仮に地球外生命圏において人類が生存していく事態を迎えたとき、

人類が生命としての種を維持できるサポートシステムの実現が、本来のG計画の構想だったのだ。


こうして開発されたのがGS1タイプの強化服であったが、

開発途上のそれは生身の人間にはまだ適合できず、DNALで臨床実験中のレベル2の人体改造が必要とされていた。

クーデターを起こした月村の研究班は、

強化外骨格の物理的な損傷や限界に疑問を投げかけていたチームで、

独自に人類の生存圏拡大が可能な遺伝子操作をベースとしたネオライブの研究を進めており、

レベル2並みの遺伝子操作で人類の環境適応能力を高めるGS2「GENESEED」を提唱していた。

しかし月村個人はひそかにGS3の開発に手を伸ばし、

これをGS2とすり替え、DNALの管理能力を超えた暴走を始めてしまったのである。

それはまさにバイオハザードのようなものだと、勇樹は吐き捨てるように言う。

八島はDNALの現在の状況について、通常の警察捜査体制では歯が立たないことを理解し、勇樹に協力を求める。

アイオロス盗難以外の情報が漏れてこない以上、

今のうちなら研究所内のクーデター組織が外部にむけて行動を起こすことはないだろう。

電光石火で反乱分子を制圧するには、勇樹の手に入れたGENESISの力を対抗措置とするしかないのだ。


それは、元同僚を殺せということかと、勇樹は八島に食ってかかる。


自分たちの研究は目的と理想から大きく逸脱していたことを、今回のような事件に遭遇して初めて悟った勇樹だったが、

クーデター組織がいかに危険な存在となっているとしても、

それを叩きつぶすということは、自らの力で命のやりとりをすることになるのだ。

八島は、勇樹自身の命にかかわる事態が起きた場合は、そう指示せざるを得ないと冷徹に答える。


この対話の最中、

涼子はアイオロスのプロテクトを解除するため、研究室から端末を持ち出して、

駐車スペースの隅に置かれていたアイオロスのそばに居た。

解析コードを読みだししながら、涼子は何かに監視されているような視線を感じた。

涼子の背後から迫る影。

音もなく闇の中から舞い降り、彼女の足元にうずくまるそれは、猛禽類ほどもある蝙蝠であった。

その両翼が広げられると、2メートルは下らなかった。蝙蝠は短く鋭い声をあげると、涼子の首筋めがけて襲いかかった。


悲鳴が聞こえた。

勇樹と八島が研究室を飛び出そうとすると、

廊下にはやはり西瓜の大きさに匹敵するようなドブネズミ色の蜘蛛が何匹かうごめいていた。

八島は、それがDNAL京都ラボの研究成果の一つ、モンスターだと告げる。

京都ラボの実態は、勇樹の知らないことであった。

木更津ラボの基礎研究を応用試験するという分野だとは聞いていたものの、そこまでもが月村の手に落ちていたのだ。

巨大蜘蛛は勇樹に飛びかかるが、八島が手にした拳銃弾を受けて狙いを狂わせる。

しかし拳銃弾程度で致命傷は与えられず、脱出しようとする二人の行く手を阻む。

勇樹は、傍らにあった消火器を使って蜘蛛の動きを止めようとする。

後退する蜘蛛。その刹那、勇樹は消火器そのもので蜘蛛を殴りつける。拳銃弾は貫通してしまうだけだったが、

レベル2の組織強化を受けている勇樹の腕力は、消火器による殴打で蜘蛛の体を粉砕してしまった。

飛散した蜘蛛の体組織に、他の蜘蛛が群がる。


 「今のうちにっ」


勇樹と八島は建物から脱出し、アイオロスのところへ駆けつける。
そこには涼子が倒れており、涼子に覆いかぶさるようにして巨大蝙蝠が涼子の血液をすすっていた。


 「涼子っ」


勇樹は蝙蝠を引き剥がそうとする。蝙蝠は勇樹に牙を向ける。組み合って転がる勇樹ののど笛を蝙蝠の牙がかすめる。

勇樹は蝙蝠の翼を引きちぎろうともがくが、蝙蝠が放射する超音波によって三半規管に激痛を受け、思うように反撃ができない。

超音波は指向性があるらしく離れた場所に居る八島には影響がないようだ。

そのとき、八島はアイオロスにつながれた外部端末のモニターに、プロテクトの解除サインが走るのを見つけた。

それが具体的に何を促すものなのかまでは、八島も知らないが、彼は勇樹にロックオフのことを知らせなければと思った。


 「北浦っ、アイオロスがシステムを発動できるぞ!!」


 「MASKが使える!?」


勇樹の反撃の時がきた。

慢心の力をこめて蝙蝠の足を振りほどいた勇樹は、左手首に巻きつけてある特殊素材製のリストバンドに向かって叫ぶ。
 

「アイオロス、俺の脳波を登録しろ」


アイオロスはその音声指令を受けて自らイグニッションし、全システムを立ち上げる。


 「起動! 変身っ!!」


叫び声と主の意志を受けたアイオロスが、MASKシステムをスタートさせる。

連動した勇樹の腰部ベルトが息を吹き返し、両手首のリストバンド両足首のアンクレットリングとを通じて元素転換フィールドを開く。

勇樹は大気を電離させて輝く光の渦に巻き込まれ、瞬時に強化装甲を身にまとった。


 「それが・・・ライダー!?」


八島は勇樹の言っていたE.R.のことを思い出した。

銀色のライディングスーツとマスクによってその姿を別のものに変えた勇樹は、ほとばしるエネルギーの噴流に耐えていた。
 
異変を察知した蝙蝠は素早くその場を飛び去ろうとするが、勇樹はそれを逃さず、一気に跳躍する。


 「てぇいっ」


勇樹は力任せに蝙蝠につかみかかり、空中で巨大な翼を引きちぎる。

それでも蝙蝠は狂ったように叫びながら、飛びかかってくる。

その攻撃をかわしながら勇樹は蝙蝠の後頭部めがけて手刀をたたき込んだ。

鈍い音を立てて、蝙蝠の頭蓋骨が粉砕し、地表に落ちた。だが蝙蝠はその一匹だけではなかった。

さらに巨大な翼を広げ、その付け根にはヒトに酷似した姿を持つ怪物が、上空から勇樹を狙って飛びかかってきたのだ。


 「ヨクモ、コノオレノシモベヲコロシタナッ」


 「お前はっ・・・お前もRIDERなのかっ」


勇樹は驚愕した。

木更津で遭遇したオランウータンもついさっき襲撃してきた巨大蜘蛛や巨大蝙蝠も、

ERシリーズの概念の中では初期段階のモンスターに過ぎない。

そして、DNALで行うことの出来る実験レベルでは、モンスターを作り出すことは可能だが、

その生体組織をヒトと融合させる技術は認可されていないはずだ。


 「オレハINVADER。オマエヲツレモドス、コロス。ドチラデモイイ」


 「INVADER!? そんなものが実用化されているなんて!」


勇樹にはにわかには信じられなかった。これが月村の仕業だということも、世界の何かが狂ってしまったということも。
 
背後から万力のような力で首を締め上げられ、空中に浮かんでしまった勇樹には、

手足を振り回しても蝙蝠人間の身体にダメージすら与えられない。


 「シネッ」


 蝙蝠人間は加速し、高度を上げようとする。


 「アイオロス! ソニックブースターっ」


アイオロスは勇樹の脳波信号を受け、その場で自走しながらターンしてウイリー状態となり、勇樹の真下に飛び込んでくる。

勇樹は両足でアイオロスのダミータンクを挟み込み、アイオロスの重量で蝙蝠人間の飛翔を妨害しようとした。

さすがに250kgの荷重が追加されると、首を絞められている勇樹も蝙蝠人間も浮かんでいられなくなった。

たまらず手を離す蝙蝠人間。

勇樹はすぐさまアイオロスに飛び移り、スタンバイしてあった高周波ガンのトリガーを引いた。

アイオロスのフロントカウルから、指向性の強い高周波が蝙蝠人間めがけて発射され、蝙蝠人間はもんどりうって転げ回った。
 
勇樹はアイオロスを蹴って蝙蝠人間に飛びつき、

そのまま拳を鳩尾めがけて叩きつける。ぐしゃりという鈍い感触が、拳に伝わってきた。
 
ぎいっ、といううめき声を上げながら、蝙蝠人間は倒れた。

再び起きあがろうとするところへ、勇樹の左足が弧を描き、側頭部にヒットした。

ごきっという首の骨の折れる音がする。蝙蝠人間は完全に崩れ落ち、僅かな痙攣を見せて動かなくなった。 


 「涼子、大丈夫か!?」


駆け戻った勇樹はマスクのフェイスロックだけを解き、フェイスガードを跳ね上げながら涼子のもとへ駆け寄った。

涼子は胸元を真っ赤な血で染め上げ、ぐったりとしていた。


「ゆうき・・・あなた、また怪我をしているわ」


涼子は勇樹に抱きかかえられながら、弱々しい動きで自分の首を覆っていたスカーフを解き、

勇樹の頬の裂傷から首筋に流れる血をぬぐおうとするが、白かったスカーフは既に彼女自身の多量の出血で真っ赤に染まっていた。


 「やめろ、体力を使うんじゃない。すぐに助けてやる」


 「それが・・・MASKのシステムだったのね・・・あなたなら、きっと、うまく・・・」


 「しゃべるな涼子。まだ、まだ生きなきゃだめだっ」


だが、勇樹の腕の中で涼子は絶命した。


 「こんなことが・・・こんなことが許されるものか」


 「そうだ。月村はこれから、これとは比較にならない愚行に出るつもりだ。
その暴走を阻止できるチャンスは、やつの態勢がまだ整っていない今しかない」


 「うるさい、俺に指図をするなっ。言われなくても月村は許さない」


 
勇樹は、涼子のスカーフをぐっと握りしめてから、自らの首筋に巻きつけた。

スカーフは血に染まり、深紅のしみが勇樹の強化服の胸元にもあとを残した。


 「涼子・・・勘弁してくれ。俺が迂闊にお前を頼ったばかりに・・・」


勇樹はスカーフを無造作に結び、フェイスガードを閉じてマスクごしに吐き捨てる。


 「お前の血に誓って、俺は月村を止めてみせる。だから、だから・・・」


 風がまいている。使い残したエネルギーが勇樹の周囲で大気の渦を作っている。

風は、地上に災いが生まれたことを憂えているのだ。

ジェネシスの力の誕生。それはぬぐいきれない贖罪の始まりだった。


 「北浦・・・彼女とは、長いつきあいだったのか」


 「・・・もう俺の名前を呼ぶな。俺はただの暴徒だ。そのために与えられた仮面がこの姿だ。
俺はあんたの言う国の安全や平和のためなんかに荷担するんじゃない。
あいつを止める。息の根を止めてでも月村の野心をたたきつぶしてやる」


 
勇樹は起動したアイオロスにまたがり、つながれている端末を引き抜くと、スロットルレバーを握りしめた。

 アクセルを何度か煽る。アイオロスは太いエキゾーストを轟かせ、勇樹の怒りにこたえる。


 「仮面の男・・・ライダー・・・」


八島はひくくうめいた。その戸惑いの声をかき消すように、勇樹を乗せたアイオロスは風を切り裂いて走り出去った。

八島はアイオロスのテールライトが見えなくなると、駐車場に移動した。


 「別室の八島です。
筑波のAILも事件に巻き込まれました。この時間ですから所員は詰めておりませんが・・・
警備員を含む死亡者3名と、例の月村のモンスターがまだ。
・・・了解しました。施設ごと焼き払いますので、事後処理を。
・・・北浦は覚醒しました。
しばらく様子を見る必要があります。ひとまず警察筋への容疑手配は、そちらから解除させて下さい」



自分専用の公用車のなかで、八島はデジタルスクランブル回線で短い連絡を告げ、再び車外へ出る。
 
慎重な足取りでAILの建物内部に戻ると、廊下にはまだ蜘蛛型モンスターが警備員の倒れているそばでうごめいている。

八島はそれを確認したあと、別の通路から給湯室へ入り込み、都市ガスのバルブを全開にして、表へ出る。
 
三枝涼子の遺体を抱き上げ、彼女の研究室の窓から無造作に遺体を放り込むと、窓を閉めてその場を離れた。

車に戻った八島はもう一度電話を取り上げ、別の番号を押す。


 「用意は出来た。30分後の午前2時、施設に火をかけてくれ」


それだけを告げると、八島は静かに車を動かし、AILの正門を出ていった。
 
勇樹に倒された蝙蝠人間は、生命活動の停止と共に体組織崩壊が始まり、灰のように消失していた。

それは体液も骨格すらも残さず、塵となってしまった。 



 「わからない。月村、なぜこんなことを始めたんだ。ERが兵器扱いされることを一番嫌ったのは、お前自身じゃないか」


風を切りながら、アイオロスを駆る勇樹は混乱から逃れられなかった。

このまま木更津ラボに戻ったところで、思いも寄らない迎撃を受けるだろうことだった。

月村はジェネストームを欲している。勇樹が戻らなくても追撃の手がやってくるはずだ。


 「やつもG2かそれ以上の力を自分に植え付けたんだ。そしてそれが不完全だった。だから強化装甲の力に頼るつもりなのか」


ひとつだけ明らかなことは、月村は仲間を殺し、勇樹は仲間を殺されたという事実だ。


 「何が望みなのか知らないが、仲間を殺したお前の行為は許さない」


勇樹はアイオロスを加速させた。

ただ1人の、孤独な戦いが始まろうとしていた。
 





アイオロスU for MM2000typeR

GENETECHのER計画に関して、GS1プロジェクトチームは、

GENESISをサポートするMASKシステム搭載車両の選定に、ドイツの工房・ミュンヒ社が開発したマムート2000をあげた。
 
このオートバイは、マイスター、フリーデリヒ・ミュンヒが製造したカスタムメイド。

搭載エンジンは、

シュライヒャー製2リットル空冷(!)DOHC4気筒ツインインタークーラー付きターボエンジンで、

260PS、最高250km/hというスペック。

西暦2000年にリリースされたものだが、250台のみの限定生産で

当時の価格は86000ユーロ(約860万円)。

これを探しだし、いったいどれほどの転売価格で入手してきたか、その経緯は不明である。

一つだけ確かなことは、

フリードリッヒ・ミュンヒにとって生涯をかけた作品の最高のものであるはずのマムート2000を

さらに材質レベルから改造し、航法/汎用AIやイオノクラフトサブユニット、

各種センサー類などを後付けしてしまう行為は、ミュンヒに対する冒涜とも言える。

300kg近い原車の自重は、それらを搭載しても材質の軽量化により、約250kgまで軽減されている。

写真は、GENETECHに搬入されたばかりのマムート2000。なんと、二台ものマムートが確保されたらしい。

typeRという呼称は正式のものではない。

アイオロスの開発陣が、符丁としてMM2000typeRというコードを使用していたことがあるようだ。

後にGENESISとして覚醒する北浦勇樹のもとへ、研究素材として届けられていたアイオロスU(これが正式名称)は、

ボディをチタンブルーにコーティング処理されたものとなっている。

完成したアイオロスUのフルテストは行われていないため、最高出力、最高速度や

その他のスペックは一切不明だ。